カネボウの元常務取締役(財務経理担当)の著者による経済企業小説です。

著者本人の体験+取材+フィクションで綴られたものなので、当時の紛糾ぶりはよくわかりました。トウボウ(本の中での社名)の有価証券虚偽記載の罪で当時の社長や副社長、監査を担当していた公認会計士が逮捕、起訴されたものです。

著者は粉飾に反対していたということで、逮捕されたものの不起訴となりました。

著者は何を伝えたかったのでしょう。
逮捕された当時の社長等だけが罪を問われているが、(罪に問われなかった)過去30年にわたる粉飾決算を行った経営者やそれを認めた当時の担当会計士がその根源にあるのだ!ということを一番主張したかったように思います。

私は一応会計士なので、本書の中で公認会計士業界や公認会計士協会そのものを著者が批判していることについては、なんとなくいい気はしませんでした(感情的に)。

カネボウの粉飾決算までにもいくつかの事件があり、公認会計士の業務そのものにも、もちろん影響がありました。
監査の品質の向上や独立性の確保等の職業倫理に関することも、今まで以上にうるさく言われています。
マニュアルでよいものをいちいちチェックリストにして、監査業務を行ったという証跡を残すことにやっきになってみたり。書類書類で本当に見るべきものを見失わないか・・逆に心配になります。

著者の立場ではそんなこと知る由もないわけですが・・

この事件で、日本ではトップ規模の監査法人が消滅しましたが、カネボウの中の稼ぎ頭の化粧品事業は「カネボウ化粧品株式会社」として生き残りました。「カネボウ」の名は消えなかったわけです。

色々な立場で色々な意見があるかもしれません。私はどうしても会計士側に立ってしまいます。もちろん会計士側にも問題は多々あると思いますが。

やっぱり、山崎豊子氏の企業小説のような重厚な内容にはなりませんね。ご自身の体験の部分は別として、やはり取材量違いということになりましょうか。

「責任に時効なし 小説 巨額粉飾」 
  嶋田賢三郎著 アートデイズ