運命の人、全4巻読み終えました。

2010年4月に「沖縄返還文書訴訟」の第一審判決が東京地裁で言い渡されましたが、その約1年前にこの「運命の人」が刊行されました。

元毎日新聞記者の西山太吉さんが「米国が支払うべき軍用地復元補償費400万ドルを日本側が肩代わりした『密約文書』が存在する」という衝撃的スクープを政府に突きつけ、その後、国家公務員法違反で有罪となった「西山事件」がもとになっている、「フィクション」小説です。

弓成亮太記者(モデル:西山記者)がいかに敏腕記者であるかというところから始まり、密約をつかんだ弓成が逮捕され、第一審では無罪を勝ち取るものの、控訴審で有罪。新聞記者生命を奪われる。
事件の本筋ではなく、外務省審議官付女性事務官と情を通じ(そそのかし)その情報を得た、というところに焦点があたっての有罪判決。著者は、その不条理さを問うために、この小説を書かれたそうです。

ここまでが第3巻ですが、第4巻では弓成が沖縄に住み(これは事実ではない)、弓成を通して、第二次世界大戦中(特に最大の地上戦について)、戦後から返還まで、また返還後の沖縄を描いています。

私も記憶にある「少女事件」「米軍ヘリの沖縄国際大学敷地内への墜落」等々、それ以外にもどれだけ沖縄の人々が米軍基地があることによって、危険に(刑事事件に)さらされてきたか。

その後、琉球大学の教授がアメリカの公文書の中に、「密約」に関する書類を発見するあたりでこの物語は終わります。

沖縄については、私など何も知らないと言っていいです。悲惨な、理不尽な、過酷な歴史を知らずに、「基地」があることで雇用が創出されていることも事実ではないの?なんて言うのは間違いだと、改めて思いました。

基地問題については「自分の問題として考えろ」とTV等でよくコメントされています。もちろんそれも必要だと思います。自分の問題として考えても、何も動かせるものではないですけど。一庶民の力では。
沖縄の歴史について無知であることが、一番ダメな気がします。

西山記者の事件としては、第3巻まででほぼ終了です。そこに著者が知らせたかった沖縄の姿を結びつけて第4巻ができています。

ですから、取って付けたような印象は否めません。
白い巨塔のように、最後の最後に物語のピーク!!と言う感じではないです。(まぁ、白い巨塔も最初は財前勝訴で終わってしまったわけですが)

その点、小説の面白さとしては、個人的に1点マイナス。

でも、

やっぱり取材にかける年月とその量に裏付けされた中身の濃さは、著者ならではだと思います。

沖縄返還時の密約(文書)、あるということは周知の事実なのに、政府はなぜ認めないのでしょう(認めてませんよね?)

あらゆる手段を使って取材しないと、スクープなんてできない・・のでしょうけど、情報源を守れなかった・・というのは(小説の中でも、弓成はそのことを後悔していた)、記者としてどうなんでしょうか。
もし、守れていたら、「西山事件」は起きなかったのでしょうか・・

運命の人(1)

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