一筋の光がっ

統合失調症の兄を持つ私にとっては。ちょっと希望が出てくる本でした。父が見つけて来た本なのですが・・

アメリカやイギリスではACT(Assertive Community Treatment)=「包括型地域生活支援プログラム」というやり方で、精神科医、看護師、薬剤師、ケースワーカといった様々な職種の専門家がチームを組んで、患者の家に訪問し、在宅での医療やケアを提供しています。これがかなり普及しているとか。

著者の高木先生はこのACTという仕組みで、日本初、精神科の在宅ケア専門の診療所を立ち上げました。この試みを京都で行っていることから、ACT-K(京都)と名付けています。

対象は主に「統合失調症」患者。そして車で30分以内で訪問できる範囲。

ああ(←感激のああ)

次兄Oはもしかすると、ACT-Kのお世話になれるかもしれません(うるうる)

この本ではACT-Kの活動を中心に、統合失調症という病気について、また日本の精神科医療の歴史や現状、問題点が書かれています。
(高木先生曰く「実は正直で純粋、愛すべき人たち」である)統合失調症患者についてもいろいろな方の例を出しながら、コミカル?軽妙?な文章で、わかりやすく表現してくださっています。

確かに精神障害者は、精神科への通院、デイケアや作業所に通うこと自体がストレスになってしまうこともあるわけで、生活しているところに訪問して医療等を提供してくださるというのは大変ありがたいことです。

統合失調症の患者は違う環境になることや人間関係での緊張感で、調子が悪くなります。
次兄Oも母の通夜や葬儀はさすがに列席しましたが、四十九日、一周忌ともに当日の朝、「気持ちが苦しい」になって、出席しませんでした。三回忌法要は最初から数に入っていませんでした(苦笑)
読経の間座り続ける。会食。兄嫁や姪、甥の前できちんとしていること。これがもうストレスなのです。

私はOの面倒をみなくてはいけませんが、やっぱりOに対しては怖いな、いやだなという思いもあります。

でも、統合失調症の患者に対する「何をしでかすかわからない怖い人」(高木先生の表現)という、この病気を知らない人がもつ印象とは違います。どんな風になるかはわかっているので。

犯罪報道の際に「精神科通院歴」が問題となることがありますけど、それもこの印象の原因のひとつで、この問題についてもこの本には書かれています。

一番Oの症状がひどかった時、私が中学生の時に受けた心の傷は今でも多少残っています。
これは私が妹であること。中学生であったこと。という要因が大きくて、決して父母や長兄は持っていない感覚だと思います。だから、いやなものはいやです。

確かにOも純粋です。でも融通がきかない。ということでもあるのですね。会話していても疲れます。

母のようにすべて受け入れることはできないし(いや、母も疲れてましたけど)、またOも母以外に「ぶちまける」ことができる人はいないです。


どうせ、

Oを包み込んで、ケアすることができないのであれば!

そうだ、

母親には絶対なれないのだから!


プロにお任せできるところはお任せして、妹としてやれることをやればいいのだ!とこの本を読んで思いました。

保佐開始の申立ても審判されたので、次はACT-Kさんを訪ねてみたいと思います。

このACT-Kの取り組みが、日本全国に広がっていけばどんなにすばらしいだろう。

そう思いました。

「こころの医療宅配便 精神科在宅ケア事始」
 高木俊介著 文藝春秋