北海道北西部で起きた、日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月のこと。
この「羆嵐」が刊行されたのは昭和52年。
まだこの惨事を知る人物が生きている間に吉村氏は貴重な話を聴き、資料にあたり、北海道を歩き、小説化した。

考えてみれば私の祖母は明治23年(1890年)生まれ。大正4年にはすでに25歳。
祖母は私が20歳の時まで生きていたので(96歳で没)、昭和40年代に生存者の話を聴くことは可能だったんだ。

吉村氏は三陸海岸大津波でも生存者の話を直接聴いている。よくぞ聴いておいてくださった。
これらの「事実」を今、知ることができるのはすごいことと思う。
もっともっと氏の著書を読みたいと思った。

小説になっているので、もちろん吉村氏の想像による表現も多いと思うが、羆と対峙した男たちの反応(特に、救援に来た他の村の者達、警官)はきっとそうだったのだろうなと思わせる。
いくら警官であっても、分署長であっても、怖いモノは怖いのだ。

それにしても当時開拓民として北海道に入植した人たちの苦労は並大抵のものではなかったんだ・・
私がしれっとこんな文章を書くこと自体が申し訳ないくらい。

羆はたまたま冬眠しそこなっただけで、食欲を満たすための行動を起こしただけなんだな・・
時は進み、人間が自然界に手を加えたり(破壊したり)、自然界に変なモノを放出したりして、他の動物がさらに生きにくくしている事実はあるわけで・・

もっと謙虚にならねば・・そんな気がした。

羆嵐改版

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